Co.to.hana DESIGN

法人設立から5年
フクシを日常にするための挑戦

株式会社ベストサポートhttp://itsumo-f.jp

法人設立から5年<br> フクシを日常にするための挑戦

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町と人を想う気持ちから

今回の案件の舞台は、千葉県千葉市にある都賀の町。
ここで障害を持った子ども達の放課後デイサービスから、お年寄りの訪問介護まで、幅広い年代に向けた福祉サービスを展開されている株式会社ベストサポート(以下クライアントと記載)さまよりご依頼をいただきました。

都賀は昔ながらの人と人との繋がりを大切にしている、誰もが懐かしさを覚えるような町。代表の竹嶋さんは自治会長も兼任しており、地域の皆さんととても仲良し。お子さんもいらっしゃるので、「あ、〇〇ちゃんのお父さん!」と町では声をかけられることもよくあり、その様子は『会社の代表取締役』といった堅苦しい雰囲気は一切なく、町の中に住民としてとけ込んでいます。
竹嶋さんは、日々地域の皆さんから町の困りごとについて相談される中、会社が町のためにできることをやりたい。年齢・性別関係なく人と人が繋がれる場づくりをしたい。と考えておられました。そこで「デザインで関わってもらえないか。」とコトハナに声をかけていただき、案件がスタートしました。

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社内コミュニケーションの機会を創出

今の状況から未来のお話まで、あらゆる観点でヒアリングさせていただくと、「将来的には株式会社から社会福祉法人へ移行していきたい。そのために社員を増やして体制を整えていきたい。」と今後の目標が見えてきました。しかし、その上で悩みや不安要素があることもわかっていきました。
組織への共感度が高い人材を採用したいが、福祉の仕事は大変そうというイメージが先行しているからか、最初の人材集めから苦戦していること。
そもそもどういった人材を必要としているのか、将来どのような会社になっていたいか、会社のビジョンががはっきりと定まっていないこと。
それらの不安要素は、社内で話し合いの時間を設けようにもスタッフ全員が現場の仕事に追われ、意見を交わす機会が持てずに、互いに胸の内を伝えきれず抱え込んでしまっていたことなどが明らかになりました。

この状況を踏まえコトハナは、取り急ぎ地域に開いた場づくりに取り掛かるより、まずは会社としての軸を組み立て太くしていくことで、将来的に地域に根付く活動がより活発になり、会社の事業拡大を後押しするのではないかと考え、まずは代表と現場スタッフが一度同じテーブルを囲んで意見を出し合い、会社の方向性を見直していきましょう。とブランディングをご提案させていただく流れとなりました。

まずは社内の各部署のスタッフ4名と代表に集まっていただき、数回に分けブランディングワークショップを開催しました。ワークショップでは『組織にブランディングがなぜ必要なのか』についての知識をお伝えすることや、スタッフの皆さんに、普段現場で感じていることから会社の未来のことまで、思い思いに話していただく機会をつくりました。最初は遠慮して発言が少なかったスタッフも、回を重ねるごとに発言が増え、言葉に熱がこもり、仕事に対する強い意思を共有できるようになっていきました。
このように、私たちはワークショップの機会でそれぞれの立場関係なく、自由に発言できる場や雰囲気をつくりだしていくことが大切だと考えています。そうすることで、今まで社内で知られていなかったスタッフ個人個人の意外な一面や、胸の内を引き出すことにつながり、より個人の想いを代弁してくれるようなビジョンやミッションに近づくことができるのです。

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フクシを日常にするために

ワークショップで皆さんの想いを聞いていると、皆さんが共通して目指している『福祉社会のありかた』が見えてきました。
それは、『支援を受ける側』『支援する側』といった線引きがはっきりしていない世界。
いつも『支援される側』になってしまう障害者や高齢者が、時には自分の得意なことを活かし、『支援する側』にもなれる。そんなやさしく曖昧なグラデーションがかかっている社会であってほしいと言います。

そうでないと『支援を受ける側』は周りから限界を決められ、社会から取り残されてしまうし、福祉は専門家がやるもの。といった様に、私たちの日常と福祉の距離は縮まることがありません。
福祉の専門家として私たちがやるべきことは、そんな”挑戦したいのにできない”といった生きづらい現実を変えるべく、”福祉の本来あるべき姿”を発信していくこと。
そして『支援を受ける側』とされる障害者や高齢者が、もっと地域と繋がれる場をつくり、都賀に暮らす皆さんが人の役に立つ機会に出会うためのサポートをすること。
こんな線引きのない社会が当たり前になれば“今の福祉の仕事”は必要がなくなるし、むしろそれを目指すべきだ。

福祉の仕事に携わる者として地域の人同士を、日常と福祉を、境い目なく繋げられるような橋渡しを担いたい。そう語る皆さんの眼差しは覚悟の色がうかがえ、現状を厳しく、かつ真摯に受け止めていらっしゃいました。

目の前の人に対して、いい意味で気取らず自然体。でも内には熱い想いと鋭い感覚を併せ持っている。そんな皆さんだからこそ、ここまで地域に開いた活動を続けてこれたのだと思い知らされる瞬間がたくさんありました。
そうしてクライアントの今とこれからを想うビジョンとミッションを、共につくりあげることができました。

    VISION
    みんながつながり支え合える社会

    みんなが笑って暮らせる町は、ハンデを持つ人々にとっても暮らしやすい町。
    そこには「支援を受ける側」「支援する側」と分けられることのない社会があります。
    そんな淡くグラデーションのかかった社会を私たちは目指します。

    MISSION
    フクシを日常にする

    どこか触れにくい、扱いにくいイメージのあるフクシ。
    そんなイメージを変え、みんなが支え助け合える日常を実現するために、
    フクシの意味やあり方をみなさんと一緒に考えます。

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“らしさ”ってなんだろう

会社の軸となるビジョンとミッションが決まると、将来像がはっきりと見えてきました。そこで、新しく生まれ変わるこの機会に『クライアントらしさ』が伝わるような社名をつくることに!
やはり真っ先に思い浮かんだのは、スタッフ皆さんと地域に暮らす皆さんとの”関係性の築き方”でした。都賀の町に溶け込んで、いつだって丁寧に人と向き合ってきた皆さんだからこそ、地域に暮らす皆さんとの関係性を『時間』を使って表せないだろうか?
そこから『ITSUMO』というアイデアが生まれました。
「いつまでも」(ちょっと永遠感ある)「いつでも」(そこまで頻繁じゃないな…)と言葉選びを繰り返し、『いつも』大切にしている距離感が関係性を一番言い表せられているかも…!ああそれだ〜!と満場一致。

こうして、株式会社ベストサポートから名前を変えたITSUMO。それに付随して会社の顔ともなるロゴマークの考案にも取り掛かりました。
ロゴマークは会社のアイデンティティとなるもので、「私たちはこういった会社です!」と企業理念を強く主張している印象があります。本来ロゴマークの存在意義とは、そういった自社をアピールするものなのかもしれません。しかしITSUMOが町にあるイメージは、そういった自社アピールや威圧感といったものには無縁のもの。社名の通り「いつも」の距離感で日常に馴染み、飾り気のないものにしていきました。

あわせてwebサイトやパンフレット、名刺への展開は、社内プロジェクトの特徴でもある大人も子どももいろんな人が混ざり合い、協力し合う様子を表現したいと考えました。
中でも名刺は「スタッフ一人一人のイキイキと動きのあるイメージ」や「その人らしさ」、「会社の雰囲気」を伝えたいと、全員1人ずつのバストアップと全身を撮影させていただき、スタッフの名刺に組み込みました。そうすることでロゴとの関わりも生まれ、スタッフ1人1人の個性が伝わるデザインとなりました。

勤務中、全スタッフは名刺を首から下げて活動しています。地域に暮らす皆さんの目に入りやすいものだからこそ、そこからコミュニケーションが生まれてほしい、そんな想いも込められています。
いろんな媒体に展開する上で、クライアントらしさを見失わずにバランスを取るのはとても難しく、常に気を配ったポイントでもありました。デザインし過ぎて飾りが多くなってしまうと、途端にその”らしさ”が失われてしまうのです。私たちが実際お会いして肌で感じた魅力を、どうすればそのままの温度で伝えられるか。誰かへのプレゼントで服を選ぶときのように、似合うかな〜と想像しながら調整を繰り返していきました。

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みんなの想いを持ち寄った町づくりをめざして

福祉団体として肩書きを表に出すことはなく、「ITSUMOの〇〇さん」と地域の人々から慕われ、壁のない1対1のコミュニケーションを大切にされている皆さん。地域にとけ込み、町の一員として暮らすように仕事をされている姿がとても印象的でした。

この案件が終わってから話を伺うと、自社のブランディングを通して会社の軸をしっかりと決めたことにより、自分たちの想いを言葉で説明しやすくなった。そしてそれは求人にも効果を発揮し、求める人物像と一致する人を採用できるようになったとのこと。
事業拡大を考えていたクライアントにとって、会社のビジョンに共感する人材が増えたことは、私たちにとっても嬉しいお知らせでした。

「クライアントらしさを大切にする」という軸でつくったアウトプットの数々は、最後まで細部にこだわり調整を重ね、クライアントも私たちも納得のいくものに仕上がりました。しかしそれらが前面に出るのではなく、あくまで「ITSUMO」の“らしさ”にプラスα添えられるものとして役立てられたらと思います。

担当者の声

担当者:北牧 加代乃

ITSUMOの活動現場にはじめて赴いた時、私は地元に帰ってきたような懐かしさを感じたのを覚えています。「福祉」と聞くと専門性の高さを感じて身構えてしまったり、どこか自分の生活とかけ離れているような気がしてしまうのに、ITSUMOの皆さんが取り組む福祉は「いつも」という言葉がしっくりくる。なにも特別なことではなく、利用者の皆さんにとってもスタッフの皆さんにとっても「日常」なのだと、そして私の日常と特別なにも変わらないものなのだと、実感が積み上がっていきました。「ITSUMOに似合うか」だけを頼りに手を動かしたら、らしいデザインになっていく。ロゴマークのプレゼン台本を読み返すと、これは台本なのか?と疑うような「こんな感じ」のオンパレードでした。代表さんに「そう、こんな感じの町なんだよね!」と共感してもらえた時、私もITSUMOの町に溶け込めた気がして嬉しかったです。

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