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2020年のパラリンピック。
そして、その先を見据えた連盟のリブランディング。

NPO法人日本視覚障害者柔道連盟https://judob.or.jp

2020年のパラリンピック。<br>そして、その先を見据えた連盟のリブランディング。

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視覚障害者柔道の魅力を伝えるために

みなさんはパラリンピックの公式種目の一つである視覚障害者柔道をご存知でしょうか?
実は、日本チームは金メダルをいくつも獲得してきたほどの実力があるんです。
さて、みなさんはこの視覚障害者柔道がどんな柔道だと思いますか?
目が見えないのにどうやって柔道をするのだろう?と思われるかもしれませんね。

健常者の柔道と比べても、特別ハンデが設けられていないのが特徴で、練習も健常者と障害者が一緒に取り組めます。競技をする姿を見ても、視覚に障害があることに正直全く気づかないほど。選手両者が組み合うことから始まるので技が決まりやすいのも特徴です。

今回の私たちのクライアントはNPO法人日本視覚障害者柔道連盟様。
まだ日本であまり認知されていない。でも実は魅力溢れるこの競技をもっと多くの人に知ってほしいと声をかけていただきました。

最初は単発的な寄付募集のためのチラシを作りたい。と始まったこの案件でしたが、よくよく話を聞き、情報を整理していく中で、連盟のビジョンを現場での活動に落とし込み切れていないことがわかりました。

今後の連盟様や視覚障害者柔道の将来を考えると、さらに世間に認知してもらうためにはチラシ作成だけでいいのだろうか。改めて視覚障害者柔道に関わる人々の声に耳を傾け、何を大切にしていきたいか、このタイミングで一緒に考えてみませんか?と「全体ブランディング」を提案させていただき、案件がスタートしました。

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軸になる想いを探し出す

ブランディングを開始する上で、まず私たちが提案実施したのは、ビジョン、ミッション、アクション、クレドを見直すためのワークショップ(全4回実施)でした。連盟内には競技の監督やコーチ、選手、理事、職員の方など幅広いステークホルダーの方々がいらっしゃいますが、改めてみんなが一堂に会することは難しいものでした。
なので様々な立場の人ならではの意見を、その人だからこそわかる深い部分まで掘り下げ集めることで、それぞれの現場での活動に繋げるチャンスをつくろうと試みました。

過去に同じ役職同士の話し合いは行われていたものの、役職の垣根を超えて、現場のスタッフさんも含めた集まりは実はこれが初めて。今までを振り返り、連盟様の未来の話をする機会はなかったようで、現在の視覚障害者柔道の現状が様々な角度から見えてきました。

視覚に障害があっても柔道を始めることができるという事実がまだ世間に認知されていないため、選手数が増加しないことや、そもそも業界全体で、ルールや情報が整理されていないこと。世間の視覚障害についての理解が未だに浅いことから、指導者としての接し方がわからず、柔道場で受け入れを拒まれてしまうことがある。といった厳しい現状が明らかになりました。

課題を踏まえた上でこれから視覚障害者柔道をどうしていきたいか。柔道を始めようか迷っている人をどうすれば後押しできるだろうか。連盟様も同じ立場ではあれど、意見にはやはり違いがあります。しかし同時に誰もが根底に熱い気持ちを持っていることもよくわかりました。

「この隙間さえ埋めることができれば、確実に大きく前進できる」

話を聞いているうちにそんな確信が湧いてきました。
そのためワークショップ中コトハナは、繋げる役割に徹することを決め、意見の偏りがないよう、出た意見をすり合わせていきました。同時に、社外には伝わりづらいと思われる言葉を、誰にでも伝わるような言葉に置き換えていきました。

ブランディングをするにあたり、クライアント様を知るための努力は欠かせませんが、注意したいのは私たちの意見ではなく、あくまでクライアント様の大切にしたい想いを尊重し、それを軸に組み立てていくこと。そのことを意識し、深入りしすぎず、かといって離れすぎない距離感を大切にしながら、納得のいくビジョンとミッションを共につくり上げることができました。

 

VISION
すべての人が障害の有無に関わらず、組み合うことを通して世界中の人とつながれる社会
日本視覚障害者柔道に対する多くの方々のご理解を一層深めると共に、障がい者スポーツが今以上に広がっていき、それに関わる全ての人々を取り巻く環境をより向上させ、誰もが住みやすい社会づくりに繋げていくこと。

MISSION
視覚障害者柔道を日本に広める
視覚障害者に対して、柔道の普及発展を促進する事業を行い、視覚障害者の社会参加と自立を図り、もって視覚障害者の人間形成に資すること。

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組み合うことで世界と繋がる

ビジョンを決める過程の中で、連盟の皆さんと私たちが大切にしたいことは、メダルの獲得数を増やしていくことや、選手の能力強化だけではないということがわかっていきました。もちろん目に見える成果も大切にしていくのですが、そこは視覚障害者柔道を知らない人たちが出会うきっかけで、むしろ柔道という競技を通して人や世界との繋がりを感じられること、競技を通して得られる達成感、視覚に障害がある方が持つべき自分への自信といった目に見えないものこそ、これからの視覚障害者柔道をつくっていく鍵になるのではないかと思ったのです。

人と人をつなぐきっかけになれるように、組み合うことで世界と繋がれる未来になっていてほしい。そんな想いをビジョンに込めました。
これは連盟の皆さんがこれまでの活動を振り返り、本気で視覚障害者柔道のこれからと向き合ったからこそ、生み出すことができたビジョンだと感じています。

そうしてつくられた「組み合うことで世界と繋がる」のビジョンを元に、デザインへ展開していきました。

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人とのつながりをつくるデザインを目指して

web、パンフレットなど様々なアウトプットの方法があるなかで「組み合うことで世界と繋がる」を一番表現できるものは何だろう?
考えを巡らせている中、私たちが目をつけたのは点字でした。視覚に障害がある方もそうでない人にも意味が伝わるもの。これをロゴマークにしたら斬新で面白いのではないか。そして「視」という文字を表す点字は、よく見ると人と人が組んでいるように見えることに気づきます。
こうして出来上がったロゴはパッと見て伝わるものになり、柔道をすることで、人と社会と繋がれ、自信が生まれるという魅力を伝えたい。という想いを込めることができました。

視覚障害者柔道では選手の目が見えないため、試合のスタートは互いに組み合うことから始まります。また、組んだだけで相手はどんな体格をしていて、強い選手なのかといった情報を受け取れる選手もいるようです。視覚情報に頼れないからこそ、そういった人の”気”のようなものを感じ取る力が発達しており、健常者柔道とはまた違う個性が面白いと感じました。

この話は私たちが現場に足を運び、選手とちょっとした雑談があったから聞けたことですが、こういったコミュニケーションが積み重なって、デザインもさらにブラッシュアップされていきます。私たちにとって、とても重要で大切な要素になります。

 

また連盟様がかねてより希望し、ようやく実現したのが『子ども柔道体験教室』

これはミッションである『視覚障害者柔道を日本に広める』ために、私たちも制作物や当日の設営、運営、広報などで協働しました。

柔道にも視覚に障害がある方と接することにも馴染みのない子ども達が、弱視のメダリスト選手に投げてもらったり、視覚に障害がある方の物の見え方を日常生活から読み解くクイズ形式にすることで、

柔道の楽しさや障害がある方との接し方を知ってもらおうというこのイベント。会場には本物のメダルも持ってきていただき、手に取ることができた子ども達は大興奮!本当に貴重な体験をさせていただき、当日は満員御礼に終わりました。

実際に選手に会ってみると視覚障害があるなんて全く気付かないほどで、コミュニケーションを純粋に楽しんでいた子どもたちの姿は、見ている大人たちにも何か気づきを与えてくれたのではないでしょうか。

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互いに成長しあえたプロジェクト

『視覚障害者柔道』という非常に難しい領域のブランディングとデザインを行った今回。

パンフレット、ロゴマーク、web、ルールガイドブックやルール説明動画、多種多様なアウトプットを制作させていただいた中で、どうしたら視覚障害者柔道の魅力を、連盟の皆さんの想いを伝えられるのか、一緒に悩みもがきながら1年以上に渡り、取り組んだ案件でした。

ここで共につくりあげたものが、これからいろんな人と柔道をつなげる役割を担い、誰もが柔道を通して、年齢、国籍、障害のあるなしに関わらず繋がれる社会に近づいていけることを私たちも願っています。

担当者の声

担当者:神谷 涼子

視覚障害者柔道という競技はパラリンピックでもメダルを取るほどの強い競技にも関わらずまだ世間的に知名度が高くないという問題を抱えていました。
現場担当の方はもっとこの競技を多くの人に知ってもらい、選手にももっと活躍してもらいたいという熱い想いを持っており、お話を聞いてるうちにその気持ちに私もなにか力になりたい、協力したいという強い想いに変わったことを覚えています。
1年に渡り様々なアクションを起こし、少しずつですがメディアにも取り上げられる機会も増え、目にすることが多くなりとても嬉しく感じています。
2020年東京パラリンピックでは様々な選手が活躍してくれることを期待し、もっとこの競技が日本中で見てもらえるようになってもらえたらと心より願っています。

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